【ポケスペ】なぜ小学生だった私は真斗さんの描くポケモンの世界に惚れたのか
Amazonで注文していたポケットモンスターSPECIALのペーパーバック版(pbk)が届いた。
再編・再録とはいえ、今年発売された漫画に日下先生と真斗先生の名前が並んでいるのは嬉しいものがある。
つい、ポケスペの最新刊を楽しみにしていた小学生の頃を思い出してしまった。
年甲斐もなく夜遅くまで読みながら、私は「なぜあの当時(小学生の時)こんなにも真斗さんの描くポケモンの世界に惚れたのか?」を考えた。
リアルタイムで読んでいた時は作画交代や学年誌の休刊が起こるなど知る由もなかったが、それら大人の事情を知ってしまった今、改めてなんで真斗さんの描くポケモンの世界を好きになったのかを振り返りたい。
なお、ポケスペの話題はデリケートな部分もあるためはじめに断っておくが、当記事はポケスペの作画交代を非難したり、真斗先生のポケモンの仕事への復活を希望する記事ではないことを明記する。
デフォルメされつつもディテールにこだわった絵
私が初めてポケモンを知ったのは1996年、小学生の時である。
友達が持っているのに影響されて、私も親に買ってもらった。
ほどなくして、コロコロコミックや小学○年生という雑誌も知ることになる。
ゲームをやっていてその世界観にぐんぐん引き込まれたが、同時にゲームのスペック不足などの関係で(今と比べると)フィールドは狭く、エフェクトもちゃちかったためにゲームの世界観を補足するのに苦労した。
今では信じられないが、当時ポケモンの世界観を知る手がかりはあまりに少なかった。
まともな攻略本も少なかったし、公式資料集みたいなものもなかった。ネットもなかったので、裏話や画像検索をすることもできない。
なんせ、ドット絵エビワラーを本来の姿とは別の姿と見間違える時代である。
当時ポケモン漫画の主力といえば言わずと知れたギエピーだった。
後は『ポケットモンスター四コママンガ劇場』とか『電撃!ピカチュウ』だった。
ギエピーは自由奔放過ぎるし、電ピカはアニメを基盤にしながらも作者の世界観が色濃く出ているし、四コマはゲームの世界観補正とはちょっと違う。
そんな中でポケモンの世界観と真っ向勝負したマンガがポケスペだったのである。
真斗さんの、ポケモンをデフォルメしつつもディテール(皮膚の模様や肌の質感)を妥協せず描き込んでいるのが子どもながらに共感できた。
特にレッドの手持ちポケモンであるピカ(ピカチュウ)の抱き心地の良さそうな小さくて丸っこい感じに憧れた読者は多いのではないだろうか。
この質感を丁寧に描きつつも、デフォルメされた、記号的なポケモンの描き方がゲームボーイの画面に表示されるドット絵に親しんでいた私にはとてもリアルに見えた。
このデフォルメされた絵の魅力は人物にもいえる。
(いくら子どもを描いているからといって)ちっちゃくて丸っこい感じ。
ゲームの中を動き回る主人公のドット絵を漫画絵にしたらこうだよね!という感じがした。
やさしくて、でもこわい絵
真斗さんの絵に「あたたかみのある」「やさしさをかんじる」「でも、かっこいい」と感想を述べる人はたくさんいる。
私もそう思う。
小学生の時の私も真斗さんの絵のそこに惚れた。
しかし、今こうして振り返ってみると、実はそれ以上の魅力に私(達)は気づいていたのではないかと思う。
それは、「怖い」という魅力である。
腐ったコダックや実験体にされたギャラドス、試験管の中で作られるミュウツーに暴走したミュウツーの細胞、ブルーのトラウマである風景。
その他、切断されたアーボックやサワムラーに蹴られるレッドなどなど。
真斗さんはあたたかみのある絵とは反対の、怖い絵も描かれている。
しかしこの妥協なき怖い絵に私は惚れた。
小学生だからと手を抜かれていない。ポケモン(というゲーム)だからと舐められていないところに私達は信頼を寄せることができたのである。
この優しい面もあり怖い面もあるという真斗さんの絵の魅力を語る時、レッドのセリフをそのまま引用するといいのではないか。
やさしくて、でもこわい。
いつまでも友だちでいてくれる。
真斗さんの描くマンガは、まさに私にとって友達であった。
こういうデフォルメしつつもディテールを失わず、優しさと怖さを兼ね備えた絵をかける真斗さんはおそらくものすごく世の中の事象を観察しているのだと思う。
真斗さんのホームページに掲載されている公開画を拝見すると、『羽ねこ』などはおそろしいほどディテールが細かく、羽ねこが猫のようにもドラゴンのようにも見えて完成度が高い。
『祭り絵』の徹底したこだわりと丁寧さは電柱にこだわりをみせる庵野秀明さんを彷彿とさせる。
総じて、真斗さんという方は感受性が豊かなのだろうなと思う。
感受性が豊か故にこの世の優しい部分にも怖い部分にも気づけ、描くことができる。
そうして描かれた絵はとても愛らしい(可愛らしさ・いとおしさ・可憐さ)。
日下先生がかの呟きの中で以下のようにおっしゃっている。
真斗先生との出会いを回想すると…、一番古い記憶までさかのぼるが、96年の11月~12月ごろだ。すごく不思議なことに「初めて会った日」より、「初めて彼女の絵を見た日」のほうが、鮮明に頭の中に刻み込まれている。
これには激しく同意である。
真斗さんの絵は、一度見たら忘れられない不思議な魅力がある。
信者だなんだという声を時折ネットで見つけることがあるが、信者とかではなく、やはりあの当時、リアルタイムでポケスペを楽しみにしていたファンにとって真斗さんの絵は良き友達のようなものだったのではないかと思うのだ。
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