【ポケスペ】なぜ小学生だった私はポケットモンスターSPECIALの世界に惚れたのか
先日は真斗さんの描くポケスペの絵について語ったので、今回はポケスペの世界観について語ろうと思う。
また、例のごとくこのブログはポケスペの作画交代を批判したり、真斗さんの復活を希望したり、今のポケスペより昔のポケスペの方が良かったと主張するものではないことをここに明記する。
私がポケスペの第1巻を買ったのは、忘れもしない、広島の福屋の向かえにあるフタバ図書八丁堀店である。
当時フタバ図書の2階がまるまる漫画コーナーになっており、そこでポケスペに出会った。(店内には、ポケスペのPOPも展示されていた。)
当時の私はまだ小学○年生という雑誌を知らなかったので、ポケスペの中身も知らないで購入したことになる。
だが、それは別に珍しいことではなく、あの頃ポケモンにハマっていた小学生はポケモンと名のつくマンガは片っ端から買っていた。
ギエピーはもちろん電ピカ、四コマ劇場、インカムでピカチュウと会話するあさだみほ先生の『ポケモンゲットだぜ!』、中村里美先生の『ポケットモンスター全書』、姫野かげまる先生の『ポケモンカードになったワケ』、印照先生の『めざせ!!カードマスター』などなど。
その中でもポケスペというのはどこか特別だった。
前回の記事でも触れているが、ポケスペはポケモンの世界観を補間するのにベストなマンガだったからだ。
何度も言うが、当時はポケモンの世界に関する情報がほんとに不足していた。
ポケモンの姿は基本的にゲーム中のドット絵か取説や攻略本に描かれている絵でしかわからない。
「そりゃそうだろ!」と思われるかもしれないが、今のように動きのある絵ではない。
ゲーム中ポケモンが技を繰り出すときだって、画面がチカチカ光って「デュクシ」と音がするだけである。(個人的に好きなエフェクトははかいこうせんだった。)
ポケモンのいきいきとしたモーションをきちんと見れるようになったのは、『ポケモンスタジアム』が発売されてからだった。
また、スペックのせいもあって、ゲーム中のフィールドは(今と比べると)驚くほど狭かった。
建物はいくつか建っているけど、入れる建物はわずか。
ゲーム進行上必要な建物と人しか配置されてないフィールド。
クチバシティのサントアンヌ号がいい例かもしれない。
(そんなわけないのに)同級生とサントアンヌ号に乗って旅に出る方法をあれこれ試した。
子どもながらに「もっと広かったらもっと壮大な冒険ができるんだろうなー」と思いながらプレイしたものだ。
さて、ポケスペの単行本を買って最初の話にまず度肝を抜かれる。
「第1話 VSミュウ」。
!!!!??????
「あの幻のポケモンを第1話に!!!??? このマンガただもんではない!!!!!」
これが小学生の私の率直な感想だった。
なにせ当時のキッズ達にとってミュウはほんとに幻のポケモンで、「ミュウというポケモンがいるらしい」という噂はあるがそれがほんとなのか実在するならどうやって捕まえるのかとにかく話題だった。
そんなミュウを堂々の1話にもってくるなんてほんとにほんと、今読み返しても挑戦的だと思う。
さらに驚かされるのは主人公レッドがニョロゾを使っていること。
オーキド博士からもらう3匹でもなくピカチュウでもなく、ニョロゾを使う!!??
レッドが幼いころからずっと一緒と聞いて納得した。
ポケモンが当たり前にいる世界で、主人公がオーキド博士からもらう前にポケモンに出会っていてもなんら不思議ではない。というか、それが普通だ。
(私が、ニョロモが最初に立案されたポケモンだと知るのは後の話)。
レベルをあげて技を覚えていくというのはメタ的な要素なので、ゲームではそれが物語を加速させていくことになるが、マンガでそれを律儀に導入されると読者としてはあきてしまうのである。
もっといえば、レッドが光を当ててフシギダネがソーラービームを使うという展開が良かったのだと思う。
フシギダネが生き物っぽいからである。
こういう細かなところに、ポケモンをほんとに居る不思議な生き物と思っている子どもへの配慮が感じられた。
そしてポケスペでもっとも感動したのはポケモンの技が人間にあたること。
ゲームをしながら子どもながらに「かえんほうしゃって人間にあたったらまずいんじゃね」とか「はかいこうせんって威力どれくらいなの?」と思っていたからである。
もちろん子ども向けゲームでそんな描写があってはいけないが、子どもだからとてそういう発想にならないわけではない。
そこをポケスペは問答無用で描いてきた。
ポケモンとの闘いで命を落とすかもしれない。
ポケモンはやさしいけど、こわい生き物。
だからこそ、ポケモンと人間の共存というテーマに説得力が生まれたのだと思う。
また、ポケモンの小ネタを随所に挟んだシナリオ。
ポケモンスタンプや偽オーキド博士のことが語られることが多いが、私がやっぱり素晴らしいなと思うのはブルーの存在だと思う。
公式ガイドブックに描かれていた黒いワンピースの女の子。
それをここまで魅力的なキャラとしてマンガに描いてくれたのは、ほんとに嬉しかった。
それら各メディアで展開されている小ネタが入ることによって、ポケモンの世界がどんどん広がった。
第22話の「VSウツボット」の時に進化の儀式というシーンがあるのも趣深い。
このシーンなぞは、首藤剛志氏の構想したポケモンの世界観に通じるのではないだろうか。
いずれにせよ、今ほどゲーム機のスペックもなく、ポケモン人口も少なく、ポケモンの世界観が確立されていない時代だからできたのだと思う。
それ故に、ポケスペを通してゲームでは描かれていないポケモンの世界を想像するのが楽しかった。
ポケスペ第1章のラスト、ミュウが感慨深げに見返って去っていくシーン。あのシーンは章の終わりにふさわしい名シーンだと思う。
ポケスペpbkを買って、あらためて幼い頃にこのマンガに出会えてよかったと思う。
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