避難所の設営をした人間から見たシン・ゴジラの避難所の描写について
公開前から話題を呼び、公開されてからはさらに話題を呼んだ。
私は東日本大震災と熊本地震で被災地や避難所、避難者に関わったことがある。
そんな私の目線で見たシン・ゴジラの避難所の描写は涙がこみ上げてくるくらい生々しかった。
床に敷かれたぺらぺらの毛布。
プライバシーなど皆無な誰からも丸見えの空間。
紐にかけられた洗濯物。
座っている人、寝ている人、立っている人。
子どもがあぐらをかいて座って、漫画を読んだりゲームをしている様子。
段ボール箱の上に置かれた食器や水筒やラジオ。
体育館のステージに置かれた補給物資も生々しい。
実際の避難所はこの空間に異臭という要素も加わる。
毎日入浴できるわけではないので、体臭が避難所には立ち込めている。
さらに配給のお弁当を食べ終えた後のゴミをゴミ箱に入れているので生ゴミの匂いもひどい。
避難者は先行き不安な避難生活にストレスを感じているため、緊張で顔がこわばり(同時に疲弊し)ピリピリしている。
私達のような外部の人間が怒鳴られることも珍しくない。
それだけ避難所は切羽詰まっているのだ。
ジ・アート・オブ・シン・ゴジラを読むと、作中の避難所のセットは区間ごとに設営しないといけなかったため、撤去より設営に時間がかかったという。
私が携わった避難所も全く同じだった。
数人でチームを組み、担当区画の設置をしていく。
世帯ごとに人数や健康状態が異なるため、避難者のニーズに合わせて設営していかなければならない。
足の悪い家族がいるところはお弁当の配給場所に近い場所を所望されるので、毛布やダンボールベッドやランプを設置をしながら避難者一人一人のニーズも拾っていく。
もちろん特定の人物だけ特別扱いはできないので、「こういったニーズがあった」という事実を避難所の管理者にフィードバックして、その後の避難所運営に活かしてもらう。
一方で避難所の撤去は避難者が誰もいなくなった後に片っ端から物を片付けていくだけなのでスムーズで速い。
それはもう呆気ないほどの速さである。
シン・ゴジラのスタッフはいったいどうやって避難所の様子をリサーチしたのだろうか。
映画の製作時期は3.11の避難所設営からは随分後であるし、熊本地震よりも前のはずである。
写真や何かの記録を参照したはずであるが、プライバシー保護の観点でなかなかそういった資料は見せてもらえない。
シン・ゴジラのスタッフはよほど優秀だと思われる。
あの映画は、世間で評価されている以上に恐ろしく完成された映画だ。
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