七つまでは神のうち―久しぶりに声に出して叫んだホラー映画―
Netflixでホラー映画でも見ようと検索してみたら『七つまでは神のうち』というホラー映画があったので見てみた。
この映画の監督・脚本はあの三宅隆太さんなのである。
三宅隆太さんといえばライムスター宇多丸さんのラジオで映画とかスクリプトドクターとかブルボンとかについて語っているお方で、宇多丸さんのラジオを聞いている人で知らない人はいないのではないかと思う。
で、この映画は三宅隆太さんいわくタマフルで話してきた要素を詰め込んだ映画なのである。
「なんだ、猫か…。」とか主観ショットとか心霊映画のカメラワークとかフィクションラインとかジャンルミックスとかカニと修造理論とか色々な要素が詰め込まれているのだ!
映画の序盤はジェイソンとかの殺人鬼ホラー映画っぽいのに途中でガラッと雰囲気が変わる。
時間を図ってみたら映画が始まって25分〜30分のところ(1幕から2幕に移る)で、あの日本人形の下りが始まるのである。
もうその日本人形の下り、いや、メリーさんの電話的な下りはほんとに怖く「うぇあ! ぅわわ!」と久しぶりに声に出して叫んでしまった。
2幕から3幕に移ると一気に話が加速し、「ああー、今までの話ってそういうことだったのかー」と観客として納得する。
一連の出来事が終わった後のお見送りの時間も素晴らしい。
「あー、なるほど。俺はこういう映画を見てたのか」と映画を見終わえる。
徹底した復讐劇も素晴らしかった。
物語のラスト、てっきりあの子だけ助かるのかと思いきや一番苦しいやり方で仕返しをするなんて容赦ないな(褒め言葉)と。
おそらくあの時の復讐している側に私が感情移入できたのは、私も親になったからだと思う。
心霊とは人の心から来るものという三宅隆太さんらしい残忍さだった。
ネットを見てみると映画の序盤の主人公の行動に対する指摘が書かれているが、私はむしろあの方がリアル感があった。
「いや、そんな隠れ方絶対見つかるでしょ」とか「そんなことより警察に連絡しろ」とか「ええから目隠しとったれよ」とか突っ込みどころはあるが、それらを全部含めて「あー、この子人生でずっと利己的な行動を選択してきたんだな(しかも粗だらけの)」と映画のラストに繋がる伏線になっていたと思う。
この映画で惜しいのはそういう物語の粗でもなく、低予算故の特殊効果のヘボさでもなく、2011年に公開したことだと思う。
やはりあの震災の年に公開したのは痛手だったのではないか。
もう少し話題になってもいい映画だったと思うだけに残念。
今はNetflixで見れるのでぜひ皆さん挑戦していただきたい。
シリアル・イノベーターとスタンド・アローン・コンプレックス
知人に頂いた書籍『シリアル・イノベーター 非シリコンバレー型イノベーションの流儀』を読了した。
シリアル・イノベーター 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀
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イノベーションと聞くと私達はappleやGoogle、facebookなどシリコンバレー型のイノベーションを連想するが、日本にそのイノベーションの型をそのまま持ってきても成立しないという観点から書かれた本である。
書籍の中ではシリアル・イノベーターを以下のように定義している。
長い歴史を持った大企業でミドルという難しい立場にありながら「シリアル(Serial)」、つまり幾度となくイノベーションを起こす人のことだ。
また書籍中にはイノベーターの特性について以下のようにも書かれている。
特に自立心は、シリアル・イノベーターにとって欠かせない特性だ。
実はこの自立心こそがプロジェクトに対する自信と大きく関係している。ここでいう自信とは、自ら行動し、何を行うかを決め、時には他者が下した決定にさえも挑む自信である。
さらにシリアルイノベーターのリスクの選択についてはこう書かれている。
リスクが適度なものかどうかという判断は、自ら顧客や課題、自身が所属する組織について研究と理解を怠らないからこそ下せる。
一見するとシリアル・イノベーターは自己中、ワンマンなイメージにとられるかもしれないがそうではない。
書籍にはこうも書かれている。
シリアル・イノベーターはもし自分が間違った判断を下せば、誰かが指摘してくれると知っている。
これらを簡潔にまとめると、シリアル・イノベーターは自ら顧客や組織、社会課題など全体を理解しているが故に自信を持って自らプロジェクトを実行することができるというわけである。
それらは自己中心的な行動ではない。シリアル・イノベーターは社会が求めている見えない課題に挑み、顧客が気づいていないニーズを発掘し、製品を開発してより善い社会を実現しようと行動をしている。
さて、これらシリアル・イノベーターの特性を見て私はある言葉を思い出した。
それは「スタンド・アローン・コンプレックス」である。
スタンド・アローン・コンプレックスとは攻殻機動隊 S.A.C シリーズに出てきた言葉である。
wikipediaに概要が書かれている。
作中における電脳技術という新たな情報ネットワークにより、独立した個人が、結果的に集団的総意に基づく行動を見せる社会現象を言う。孤立した個人(スタンドアローン)でありながらも全体として集団的な行動(コンプレックス)をとることからこう呼ばれる。
一見、個別で行動しているように見えるが、実はそれは集団の総意に基づく行動をとっているということである。
攻殻機動隊 S.A.C.では笑い男とクゼがスタンド・アローン・コンプレックスなキャラクターとして登場する。
笑い男はある企業を巡る陰謀の事実を知ってしまい誘拐事件とハッキング事件を起こす。
クゼは招慰難民の意思を汲み取り、難民のゴーストをネットに運び出し強制的な進化をしようと試みる。
両者は社会の中の小さな綻びに挑戦し、自らが実践できる範囲で行動を起こしている。
その義侠心と有言実行の行動力に憧れた者は彼らを手助けする。
一見両者は社会規範を逸脱した犯罪者のようだが、実は彼らを取り巻くコミュニティが望んだ行動をとっている。
だからこそ、草薙素子は彼らを心底憎むことはできない。
この、一見するとルールを無視した行動をとっているが、実は社会が求めた行動をとっている点はシリアル・イノベーターもスタンド・アローン・コンプレックスも非常によく似ていると思った。
しかし驚くべきは、攻殻機動隊 S.A.C.が2002年公開の作品だという事実である。
2002年といえばiPodが発売開始された翌年。
そんな時代にシリアル・イノベーターを連想させるキャラクターを描けるとは、フィクションの世界はすごい。
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ディストピアものと嫌厭するなかれ。女性の描き方が美しい『トゥモロー・ワールド』
Netflixにてアルフォンソ・キュアロン監督の『トゥモロー・ワールド』を見た。
サターンSF映画賞を受賞しており、アカデミー賞もノミネートしているので事前にこの映画の評価は知っていたのだが、まさかここまで面白い映画とは思わなかった。
ディストピアものは私の大好物なのだが、『バビロンA.D.』と『アイランド』を面白いと思えなかったのでこの手の映画を見る前はかなり慎重になるようになってしまっていたのだが、本作のラストではマジ泣きをしてしまった。
この映画はよく映像面が評価されているが、それは町山智浩氏や前田有一氏が語っているので私のブログでは省く。
省くのだが、一言感想を述べると、「あれ、俺ドキュメンタリー番組見てたんだっけ?」と錯覚してしまうほど臨場感ある映像に仕上がっている。
ありきたりなストーリーにリアルさを持たせる、まさに映画ならではの表現だと思う。
さて、私はこの映画を女性の描き方、主人公が銃を持たない、音楽の使い方の3点で語りたいと思う。
女性の描き方
この映画では女性の一人ひとりを個性的に、生き生きと描いている。
セオとピンポン玉でじゃれあうジュリアン。元助産師として友人としてキーを守ろうとするミリアム。一言も話さないがそこに座っているだけで安心で、家庭的にも感じられるジャニス。主人公達をサポートするマリカ。クライマックスで赤ちゃんの鳴き声を聞き集まってくる女性達。そして今作のヒロイン、いや主人公であるキー。
彼女達の個性は決して説明臭くなく、表情や話し方、服装で表現されている。
特にマリカは最初スラム街で器用に生きている売人かなにかのようにしか見えない。言葉も通じないし、この人を信じて良いのかわからない。
それがキーが赤ちゃんを産んだとわかった瞬間とたんに強くなり、主人公サイドを助ける。
このマリカの行動の変化に映画で言いたいこと全てが詰まっているような気がした。
彼女達が生き生きしているが故に、死んだ時には観客である私達も本気でショックを受ける。
女性がいなくなった途端になぜだか不安になる。
女性が画面に収まっているか否かだけで観客の緊張をコントロールするのはこの映画のすごいところである。
主人公が銃を持たない
この手のディストピア映画では珍しく主人公は銃を持たないし、強そうではない。
本作の主人公セオは過去に活動歴があることはわかっているが、『96時間』のリーアム・ニーソンや『イコライザー』のデンゼル・ワシントン、『ジャック・リーチャー』のトム・クルーズのような「あ、こいつ怒らせちゃまずいんじゃね?」という雰囲気は皆無である。
『ボーン・アイデンティティー』や『キラー・エリート』のクライヴ・オーウェンとは全く違うのである。
一方で『ホテル・ルワンダ』のドン・チードルのような普通すぎる人かと言えばそうではない。
セオは適度に頼りになりそうなオーラはまとっている。
本作のクライヴ・オーウェンは戦いの中での身の振り方はわかっているが、好戦的ではないといった感じなのだ。
そんな銃も携帯しない男が武装している政府軍や反政府組織に狙われるのである。
しかも守らなければならないのは若き妊婦。
これはもう観客はハラハラものである。
主人公が銃を持たないという要素を、この映画では効果的に利用している。
本作では銃を持っている男を暴力的、利己的に描いているのだ。
ルークなんぞは相手を言いくるめるのがうまいDV夫のようだし、シドは利益や機嫌に左右されやすいゴロツキのようだ。
いや、それよりも観客として作中の男達に思わず言いたくなるのは「妊婦の近くで銃ぶっ放してんじゃねえ!!」である。
作中の男達の、子どもが生まれない世界でキーが妊娠していることの重大さがわかってない感じ。
ジャスパーの部屋にある風刺画と合わせると今世界で戦争している我々人類にはちくりとくる演出だ。
音楽の使い方
最初映画を見ていて「音楽の使い方あざとすぎじゃね?」と思った。
映画の前半部分で、ある人が銃で撃たれて死ぬシーンやキーが妊娠しているところを告白するシーンなど。
さすがにそこまで露骨に音楽流さんでもこのシーンの重要性はわかってますよ、とちょっと冷たい目で見てしまった。
が、映画のラスト、マリカがボートで二人を送り出すシーン。
まるでナイル川にモーセを送り出すような神秘的で切ないシーン。
あそこで音楽が流れて私は一気に涙腺が崩壊した。
「今までの悲しいシーンや重要なシーンで流れてた露骨な音楽はこのシーンのための前座だったの?」と突っ込まざるをえない(良い意味で)。
主人公達は銃声の鳴り響く海に出ていよいよ映画の最後へ。
モーセのナイル川とは正反対な三途の川の意味合いもあるのかもしれない。
実は音楽が流れたのはほんの少しだけで、気づけば波の音だけになっている。
そこで映画は終わりこのまましんみりした雰囲気でエンドクレジットかと思いきや「おいおい! そう来る!?」と歓喜せずにはいられない音楽が鳴り響く。
まさにマイケル・ケイン演じるジャスパーのキャラを反映させたかのような展開に観客として嬉しくなってしまうのだ。
そうなのである。この映画は希望を描いているのだから、最後はこうでなくてはならない。
と、まあ単なるディストピアものだろうと舐めてはいけない良作だった。
正直言って子どもが生まれなくなった世界で妊娠した少女がいるなんてアイディアはよくあるのだ。
それを画と音楽でしっかり説得力を持たせてくる。
時間も109分とちょうどいい。
ゲームをしたことある人にしかわからなくて恐縮だが、『ラスト・オブ・アス』を初めてクリアした後のような後味に浸れた。
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【共謀罪】賛成か反対かよりも国民一人ひとりが賢くなって国家を監視できる社会にするということ
どうやら話題の共謀罪が成立してしまったようである。
共謀罪の危険性を訴えた記事が下記。
共謀罪を支持する人の大半が「国家の安全」とか「テロ対策」を掲げている。
中には「もっと早くに共謀罪があればオウム真理教による事件も防げたのではないか」という意見まである。
しかし本当に国のシステムが強固になれば国民の安全は守られるのだろうか。
私は日本でこれまで発生したテロ事件は国民が厳しい目を持っていなかったことが原因だと思っている。
今回の記事では、日本赤軍によるテロ事件、オウム真理教によるテロ事件、三億円事件を基に解説していく。
日本赤軍によるテロ事件
学生闘争に参加していた一部の学生が地下活動をするようになり、過激派集団になってよど号事件やあさま山荘事件を起こしたあれである。
彼らは銀行強盗や猟銃店を襲うことで活動資金をため、偽名を使って潜伏するアパートを借り、山の中で軍事演習をした。
ここだけピックアップすればあの時代に共謀罪があれば赤軍によるテロを防げたような気がする。
だが、私は彼らと彼らを取り巻く社会の温度差に注目したい。
学生闘争に参加していた彼らがどのように地下組織になっていったのかをよく描いているのは山本直樹による『レッド』だと思う。
レッドを読むと、1巻の冒頭からいきなり衝撃的なシーンが続く。
夏休みに入ったからという理由で闘争の会議の出席率が悪くなるというシーン。
扇子を持った(先生と思われる)大人が学生に「はやりのバリケード封鎖やらないの?」とのんきに話しかけるシーン。
闘う兵隊が少ないからと角材を薪に火を焚くシーン。
闘争心むき出しの人間とそれと対になるクールな人間。
そのクールさは冷静とも違う嘲笑する感じ。
「どうせ学生がやることでしょ」と下に見て、いざ彼らが事件を起こしてから「危険な学生だ!」と騒ぐ世論。
押井守の『人狼 JIN-ROH』とは違う空気感。
あの時闘争に参加していた学生を真剣に捉えていれば、もっと違う結果が待っていたかもしれない。
オウム真理教によるテロ事件
オウム真理教による事件は今更このブログで語るまでもないと思う。
事件を振り返りたい人はwikipediaにもまとめられているのでそちらを参照した方がいいだろう。
オウム真理教がどれだけ極悪だったのかを語る人は多くとも、オウム真理教がメディアに出ていたことは多くの人が忘れていると思う。
団体の代表である麻原彰晃はテレビに何度か出ているのである。
どのテレビ番組でも麻原彰晃を変わったタレント程度にしか扱っていない。
ここでも麻原彰晃と周りの人間の温度差を感じる。
オウム真理教の強行的な入信活動が指摘されていたにも関わらず、テレビを通じて世間の多くの人は麻原彰晃やオウム真理教をネタにしか思っていなかったのである。
明らかに怪しい組織であるオウム真理教を当時早い段階で捜査できなかったのは法律のせいなのだろうか?
共謀罪とオウム真理教の関係を基に書かれた記事はいくつかある。
私は社会の仕組み以前に、世間のオウム真理教に対する態度が問題だったと思う。
事件発覚後も「オウムの法則」と称してオウム関係者をテレビに出せば視聴率が取れる状態が続いたことが、当時の世論を象徴しているだろう。
結局お茶の間はワイドショーの中の出来事にしか捉えなかったのである。
同じく概要はwikipediaを見ていただければだいたいのことがわかると思う。
三億円事件は誰も傷つかず、見事にお金が盗まれたことで未だに話題に上る未解決事件である。
事件解決のために警察の一斉捜査が行われ、被疑者の数は十数万人に及んだが、真犯人は捕まっていない。
一方でマスコミの報道で疑いをかけられて自殺をした人がいる。
マスコミの報道、というより世間からあらぬ疑いをかけられた例は松本サリン事件の河野義行氏も記憶に新しいだろう。
また、出回っている情報を基に冤罪(と思われる状態)に持ち込まれた例は他にもある。
結局私がなにが言いたいのかと言うと、まだ起きていない事件に対して情報だけで「悪」と決めつけ、司法の場に引きずり出すことは難しいということが言いたいのである。
たしかに共謀罪なりテロ等準備罪なり呼び名はなんでもいいが、これから起こるかもしれない事件を事前に防止できればそれは治安維持が完成された理想的な社会だ。
だが、『マイノリティー・リポート』や『エネミー・オブ・アメリカ』、『陰謀のセオリー』など数々の映画で国家が定めたシステムは完璧でないことが明示されている。
どんなに女性を守りましょうと謳った所で、結局一般の人には見えない捜査の中で傷ついている人だっている。
大義名分を掲げてシステムを構築しようともそれを使ったり、信じたりするのは人間なのである。
そして、私達は防潮堤を波が越えてくる映像や安全だと言われた原発が壊れた映像や広範囲に町を封鎖しないといけない事態を目にした東日本大震災の時に、国家は国民一人ひとりの命を守れないことを知った。
共謀罪による権力の乱用やヒューマンエラーが決してないとは言いきれない。
こちらの記事で「国民による社会の監視の目がしっかりしていれば乱用の恐れはなくなる」と書かれている。
国家がきちんと機能しているのかを国民一人一人が賢くなり、監視するのはイタリアでは当たり前である。
世の中の常識に対して「なぜそれが常識なのか?」「ほんとうにそれは正しいのか?」を常に問う姿勢、それが真の民主主義なのだ。
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【アニメ・漫画規制】性犯罪と性欲の関係を窃盗と物欲の関係に置き換えるとバカバカしくなる話
久しぶりにtwitterを見ているとこんなツイートが流れてきた。
共謀罪は心配しすぎという人いるが、現行法でもこういうことしちゃう取り締まり側がいる以上心配なわけですよ……強制わいせつ容疑の男「漫画を真似」県警、作者に異例の申し入れ(埼玉新聞) - Yahoo!ニュース https://t.co/yerKIHfCV2
— とり・みき/TORI MIKI (@videobird) 2017年6月13日
リンク先の記事を見るとこんなことが書かれている。
「検査」と称して女性の身体を触ったとして、強制わいせつ容疑などで埼玉県警に再逮捕された男が、成人向け漫画同人誌を読んで手口を真似したという趣旨の供述をしていることが13日、捜査関係者への取材で分かった。
さらに記事の最後の方にはこのように書かれている。
捜査関係者は「表現の自由との兼ね合いもあって難しいところだが、子どもを狙った悪質な事件で、社会に与える影響を考慮して申し入れを行った。今後、ほかの作者の作品が模倣されて犯罪が発生した場合も、同様の申し入れを行うことを検討したい」としている。
2chのまとめサイトを検索したらこの事件に関する以下のまとめ記事が。
毎回この手の事件の後にやり玉にされるのがアニメだったり漫画だったりである(ポルノ、非ポルノ関係なく)。
私はアニメや漫画と性犯罪をリンクさせる議論がほんとにバカバカしいと思っている。
上記の記事にも書かれているとおり、性暴力はマンガ・アニメ・ゲームの影響であると結論付けるのは全く持って不誠実であることがわかる。
アニメや漫画が偏見の眼差しで見られるようになった大きな原因はおそらく宮崎勤事件ではないだろうか。
宮崎勤は膨大な量の漫画やビデオを収集しており、その中に含まれていた性的・暴力的な漫画やビデオに悪影響を受けた結果、あのような犯行を起こす人間性が出来上がったと当時のマスコミは報じた。
この報道は影響が大きく、有害コミック騒動が活発化したほどである。
ただし
にも書かれていると通り、実は宮崎勤はさほど性的・暴力的なコンテンツは所持していなかったことがわかっており、現在は宮崎勤の人間性が漫画やアニメの影響で出来上がったという考えは短絡的だと指摘されている。
性犯罪と言えば未成年を狙ったケースが目立つが、例えば高畑裕太氏によるホテルの従業員に暴行を働いた事件も記憶に新しいと思う。
この高畑氏の事件の時も記者会見で「性癖は?」と訊いた記者がいたが、なんともそんな質問をして恥ずかしくないのかと思った。
性犯罪が起きれば必ず議論になるのが犯人の性癖や性欲なのであるが、これはもうなんとも的はずれな議論であることは性犯罪と性欲の関係を窃盗と物欲の関係に置き換えればわかると思う。
世の中のほとんどの人がお金が好きである。
ミニマリストとかヒッピーとかお金や物に縛られない暮らしを目指している人がいるが、彼らも皆「お金」を意識しているからこそ物を持たない生活をしているのである。
私も含めて世の中の人はお金をほしいと思っている。
では私達は「お金が手元にない。そうだ! 窃盗しよう!」という思考になるだろうか。
お金が必要だからその辺歩いてる老人殴って財布奪ったるわい! となるだろうか。
映画『凶悪』で人を騙して殺せば金になるってわかったから俺もいっちょやったるか!となるだろうか。
いや、ならない。
これは当たり前のことで、「お金が欲しい」ということと「犯罪をしよう」という思考回路は全く別だからである。
普通人間というのは「今ここでこんな行動を起こしたらリスクの方がでかいよな」と冷静に考えてしまう。
それは映画『ファイトクラブ』でタイラーが「町中でケンカをふっかけてこい。そして負けろ」と命令した下りで主人公も解説している。
「大抵の人間はケンカをさけるものだ」と。
つまり人間は感情的な行動よりも損得勘定を元に論理的に考える方に思考が及ぶのである。
だから、世の中のほとんどの人はお金が欲しくとも、窃盗やスリ、詐欺を行おうとしない。
それは性犯罪にも同様に当てはまる。
その辺を歩いている女児をどこか人気のないところに連れ去って、わいせつ行為をするなんてリスクの方が大きすぎる。
前述の検査と称して自宅に侵入し女子中学生にわいせつな行為をすることもはっきり言ってリスクしかない。
その場の性欲を満たすことはできても、人生をトータルで見た時に損失の方が大きい。
それこそ自宅でエロ漫画を読んでいる方が割にいいだろう。
性犯罪に走ってしまう人は、性欲うんぬんよりももっと深刻な状態。
つまりまっとうな社会人として当たり前な論理的思考をすることができないのだ。
メディアはここにこそ注目するべきであろう。
@disca ポルノを見ていたら強姦をしたくなった」のではなく
— 鈴木修 (@b35odqlouozhx8o) 2013年8月29日
「強姦ファンタジーを刺激するために、ポルノを用いた」のです。
【カナダの性犯罪加害者クリニック」の患者の調査】は、
単に性犯罪者がポルノを利用した事が明らかになっただけ。
強盗が銃や包丁を利用した様なものだ
このツイートにもあるように、性犯罪者はすでにある「性犯罪をしてでも自分の性欲を満たしたい」という欲求をポルノで補っているのだと思う。
性犯罪が起きた時に「なにかコンテンツの影響を受けた」と考える人がいるのはなぜなのか?
それは彼らが「なぜ事件が起きたのか?」を真剣に考えたくないからだ。
なぜ人は犯罪を犯してしまうのかを真剣に考えるよりも、何かを悪者にしてしまった方が手っ取り早い。
これは、下記の記事のように情報を鵜呑みにしてしまう人達がそういう情報を信じ、拡散するのだと思われる。
自分達が一つの情報に影響されやすい人間だから、他の犯罪を犯した人間も「なにかに影響されやすい人間なんだ。そうだ、性犯罪だからポルノだ! 女の子がきゃっきゃしてるアニメを普段から見てるんだ」と勘違いをしてしまうのだろう。
人間というのはそう簡単に欲と行動が結びつかないのである。
だからこそ行動心理学という学問があり、日々研究が行われている。
欲と行動がすぐに結びつくのなら、ユングもデカルトもゲーテも要らなかったのだ。
アニメや漫画の影響で犯罪者が出来上がるなんてほんとに信じてる人が少ない今、
私達は「なぜ人は犯罪をしてしまうのか?」を本気で考えないといけない。
ーーーーーーーー追記ーーーーーーーー
警察の方も何かお仕事をする必要があったのでしょうし、コンプライアンスを徹底させてるのか終始へりくだってたし。申し入れっていうと仰々しいけど、実際は菓子折りとお茶飲みながらもっとふにゃ~っとした会話をしたよ。がいがぁはアイアムアヒーローやウシジマくんのコマ割りの影響を受けていて…
— クジラックス (@quzilaxxx) 2017年6月13日
犯人の男、放射能検査の手口以前にもわいせつな痴漢行為等何件もやっていたそうで、がいがぁをネットで見て思いついた方法は彼のバリエーションの一つでしかなく、今回110番通報されたのが放射能検査の手口だから目立ってるんだな、というのはある。
— クジラックス (@quzilaxxx) 2017年6月13日
のんのんびよりのほたるんが引っ越してきた理由―ほたるんは移住計画で引っ越してきた!?―
あっとによる人気漫画『のんのんびより』。
私もこの漫画の大ファンである。
この漫画は東京の都会で暮らしていた女の子一条蛍(ほたるん)が引っ越してきたところから物語がはじまる。
ほたるんは田舎の生活に驚きながらも、れんちょんをはじめ地元の子達と交流することで少しずつ成長していく。
ほたるんはなぜ東京の都会からわざわざ田舎に引っ越してきたのだろうか?
作中では父親の仕事の都合で引っ越してきたとだけ説明されている。
仕事の都合でとあるが、その引越は一時的なものなのか?
私は、のんのんびよりの舞台の村が移住計画を行っており、ほたるんの家族はそのプロジェクトの一環で引っ越してきたのだと睨んでいる。
そう思う理由はたくさんあるが、この記事ではほたるんの家、ほたるんの家族と地域との距離感、ほたるんの親御さんの教育の3点に注目したいと思う。
ほたるんの家
ほたるんの家は二階建ての庭付き一戸建て。ベランダもついている。庭には花壇もあることからお母さんもしくはお父さんがガーデニングや家庭菜園をやっていると思われる。
宮内家や越谷家、富士宮家とは異なり家の作りが新しい。
この家は引っ越してくる際にもともと建っていた家がリフォームされたものなのか新築なのかの二択になるが、漫画版のんのんびより2巻の15話にて「ほたるんち綺麗だなー」とつぶやくなっつんに対して「まあ 築何年もたってるウチと比べるとねー」とこまちゃんが答えているところから新築であることがうかがえる。
漫画版のほたるんの家のディテールは木造のようだ。
このことから最初ほたるんの家は無印良品が提供している木の家だと思った。
アニメ版のほたるんの家はディテールが少し変わっており、積水ハウスやタマホームのようなデザインになっている。
写真を見ると、玄関及び玄関周りへのこだわりも感じられる。
この規模の戸建てを建てようと思ったら住宅だけで1,800万円〜2,000万円はかかってしまう。さらに固定資産税や土地代、日々の光熱費も加算されていくので一条家は一時的な引っ越しではなく、長く住むつもりでこの村に引っ越してきたことがわかる。
さらにほたるんの家の中も注目したい。
ほたるん家の家具は無印良品(を思わせる)家具が多い。
古い家具を使うわけでも、安い家具を使うわけでもなく、無印良品(のような)家具で統一しているところを見ると一条家は無印良品のコンセプトに賛同して買っていると思われる。
無印良品のビジョンは「良品」には、あらかじめ用意された正解はない。しかし、自ら問いかければ、無限の可能性が見えてくる。
である。
さらに注目したいのはほたるんの家の中はアート作品が飾られていることである。
玄関にも階段にもリビングにも作品が飾ってある。
ほたるんの部屋には飾っていないことから、ほたるんの両親の趣味だと思われる。
昨今はアートのある暮らしが注目されている。
というのも、「アートは問題提起。デザインは課題解決」と言われるように、アートは創造性や想像性を育む良きツール(またはパートナー)と考えられているからだ。
このような考えを取り入れた国はフィンランドである。
フィンランド独立100周年記念で開催されたフィンランド・デザイン展は日本中で話題になった。
フィンランドは戦後貧しい期間が続いた。そんな貧しい時代を豊かに暮らそうと思い、生活の中に取り入れたのがアート作品やデザインである。
日本では長らくアートは値段が高いもの、お金持ちの道楽、役に立たないもの、という印象が強かったが、昨今はテクノロジーの発達も相まってアートが身近になり、アートによる豊かな暮らしの実現や町づくりが注目されるようになった。
もちろんほたるんの家が単純にインテリアとして飾っているという可能性は捨てきれないが、高いお金を払って田舎に引っ越してきた点や無印良品の家具を愛用している点なども考慮して、総合的に見ればほたるんの家は「暮らし」にとても関心のある家族であると断言できる。
ほたるんの家族と地域との距離感
ほたるんは実はこの村に初めてやってきたわけではない。
ほたるんの親戚がこの村に住んでいるのである。
だから、ほたるんの両親はこの村の人達と昔から交流があったと思われる。
漫画版のんのんびより5巻36話にてほたるんの両親が地元の道普請に参加する描写がある。
道普請というのは冬の雪解けで汚れた用水路の点検や掃除、道端に伸びてきた植物の枝打ちを村の皆でやることである。
漫画版のんのんびより9巻68話ではほたるんがどんど焼きに来ている。ほたるんの両親が直接やってきている描写はないが、ほたるんが一人でやってくる可能性は低いし、れんちょんがほたるんを見つけた時に少し驚いた表情(待ち合わせをしていなかったことがうかがえる)、どんど焼きが終わったらほたるんはれんちょん家に寄らず家に帰っていることからほたるんの両親もこのお祭りに参加したと思われる。
それがどうしたと思われるかもしれないが、これがとても大切なことなのである。
田舎というのは地域の行事に参加し、地域の人達と繋がれなければ暮らしていて苦しい場所なのだ。
10年位前から日本では田舎暮らしが流行り、「田舎でのんびりした生活をしましょう」とか「田舎で自分のペースで暮らしましょう」とか「田舎の優しさに触れましょう」というキャッチコピーが流行った。
だが、実際は田舎は行事ごとが多いし、集まりも多い。
それらに消極的だととたんに冷たい目で見られるのである。
現在日本では空き家が問題になり、行政は空き家バンクを始めたがなかなかうまくいかない。
その理由は空き家バンクに空き家を登録して、広く住居者を募集した場合、誰が住み着くかわからないからである。
地域のことに興味のない人に住んでもらっては地域の人は困る。
さらに、地域のことも考えずに勝手に空き家バンクに登録して誰かに住んでもらっては、空き家バンクに登録した元の持ち主が冷たい目で見られてしまう(同時に移住者も快く思われない)。
田舎に引っ越すとか、田舎で暮らすというのはとても大変なのである。
移住計画などで最初にターゲットにするのはUターン(地方から都市部へ移動した者が再び地方へ戻ってくること)の世帯にすることが多い。
それは移住者にとっては昔懐かしい村なので勝手がわかっているし、受け入れる側からすれば勝手がわかっている人がやってくるので、双方に最初のコミュニケーションがしやすいからである。
移住者自身の親や親戚が村にいることがあるので、移住者にとっては全く見知らぬ土地に行って暮らすよりハードルが低いのである。
ほたるんの親戚がのんのんびよりの舞台である村にいることから、ほたるんの両親は村に来る度に移住計画の担当者と話をして引っ越しの準備を進めていたと思われる。
ほたるんの親御さんの教育
ほたるんの両親は過干渉ではない適度な放任主義だと思われる。
ほたるんがれんちょんやなっつん達と遊ぶことを何ら禁止していない。
ばりばりの都会暮らしの親御さんなら橋の上から川に飛び込む遊びなど卒倒するほど驚きそうだが、決してそんなことはない。
また、いくら担任の先生がついていくからと行って子ども達だけで沖縄旅行に行くことを許可したのもほたるんの両親の懐の大きさを示しているだろう。
漫画6巻45話では真っ暗な中(先輩と一緒とはいえ)森に星を見に行くことを許可している。
だからといって娘のほたるんに全然関心がないかというと、それも違う。
ほたるんは自主的に宿題をする癖があるようだが、これはやはり両親の教育の賜物だと思う。
漫画の8巻58話にて夕食の際にほたるんのお母さんが「食器運ぶの手伝ってー」と声をかけていることから、日常的に家のお手伝いをさせていることがうかがえる。
漫画3巻20話では料理に詳しい描写があり、漫画11巻82話ではクッキーの作り方を覚えていることから日常的にほたるんはお母さんとキッチンに立っていると思われる。
思うに、ほたるんの両親は我が娘に秘められた特性を見抜き、田舎暮らしを始めたのではないだろうか。
ほたるんは都会の暮らしよりも田舎の暮らしの方が性に合っているのである。
漫画2巻11話では他人の家でご飯を食べることを戸惑いつつも喜んでいるし、漫画6巻44話ではヤモリを見つけて喜んでいる。
漫画5巻38話では(合わせはわかっていないが)誰に教わったでもなく釣りをなんなく始めている。
なにより東京にいた時は携帯電話を持たせていたほたるんの両親が、田舎に引っ越してから持たせなくなった点(漫画7巻54話)はほたるんの両親が田舎暮らしに対してどれだけ積極的で、我が娘が田舎暮らしに興味をもつことをどれだけ楽しみにしているかがうかがえると思う。
以上の理由からのんのんびよりの舞台になっている村は移住計画を推進していて、ほたるんの家族はその移住計画の最初の移住者であると推測できる。
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カウボーイ&エイリアンは計算された映画―西部開拓時代を皮肉りつつもシリアスすぎない良作―
なにか面白いB級映画でもないかと思いNetflixで『カウボーイ&エイリアン』を見た。
ダニエル・グレイグとハリソン・フォード主演という作品の説明書きを見て、
「この二人もとんでもない映画に出ちゃったなー」と半笑いしてしまった。
しかし実際に見てみるととてつもなく計算されたストーリーテリングに感服してしまう。
褒めるべき点はいくつもあるが、私は以下の点でこの映画を評価したいと思う。
それは、この映画が『第9地区』的なエイリアンの混入と人間のエイリアンに対する反応、そしてシリアスになりすぎない娯楽映画の展開である。
『第9地区』的なエイリアンの混入
ニール・ブロムカンプ監督の映画『第9地区』は黒人と白人が対立している中に「社会的弱者のエイリアンを混ぜたらどうなるのか?」という発想から生まれている。
カウボーイ&エイリアンも同じような発想から生まれていると思う。
時は西部開拓時代。ゴールドラッシュの影響もありアメリカ大陸に移住してきた白人達はインディアンを迫害・殺害をしつつ土地を開拓し金を採掘していた。
そこにさらなる移住者であるエイリアンがやってくる。
これまで圧倒的な近代兵器によってインディアンと戦争していた白人達は圧倒的な超兵器を持ったエイリアンに逆に殺戮をされてしまう。
しかもエイリアン達はカウボーイの投げ縄のようなワイヤーで次々に白人達を捕獲する。
さらにエイリアン達の目的は金である。
今まで白人達が我が物顔で掘り尽くし、白人同士で奪っていた金を自分達より強い移住者に奪われてしまった。
自分達は絶対の侵略者だと思っていた白人達がエイリアンの登場によって弱者に成り下がり、敵対していたインディアンや市民権を剥奪されたアウトロー達と協力してエイリアンと対峙していく。
評価すべきはオリヴィア・ワイルド演じる人間の味方であるエイリアン、エラをキャラクターに入れたことである。
西部開拓時代の白人達は様々な部族のある先住者をインディアンと一括りにすることで差別し、武力で圧倒していった。
もしこの映画が他の星からやってきた移住者をエイリアンという言葉で一括りにしてしまっては西部開拓時代の白人の愚行を繰り返すことになってしまう。
エラというキャラクターを一人入れるだけで、差別を繰り返さなかった点は大いに評価できる点である。
人間のエイリアンに対する反応
私は映画の中の人間が見たこともないテクノロジーに触れて原始人のように驚く描写がほんとに苦手だ。
『バトルフィールド・アース』で戦闘機を見た人間が「空飛ぶ槍だ」と表現するところはこっ恥ずかしいものがあるし、『BALLAD 名もなき恋のうた』でノロノロ動く車に過剰なまでに怯える戦国時代の敵兵には呆れて笑ってしまった。
人間は時代が変わろうともある程度の理解力と想像力はあるはずである。
だから過去の人間が未来のものを見た時に原始人のように「な、なんだべこれはー!」と驚くのはおかしい。
本作ではエイリアンの無人戦闘機を「悪魔」と表現する。
「悪魔」と表現するのは牧師だ。
そこに自然さを感じる。
たしかにこの時代にこの人ならそう表現するよね、という説得感がある。
さらに、エラがエイリアンについて語るシーン。
「私達は別の星からやってきたの」なんて語るシーンはありきたりだが気をつけなければ突拍子もなさすぎて、(例え真実を語っていても)語っている人物が間抜けに見えてしまう。
それを作中ではインディアンの集落の中でという神秘的な空気の漂う中で語るため極めて自然で極めて説得力がある。
初めて敵側のエイリアンが姿を表わすときも、それは何らかの力によって地上に反転した状態で放置された船の廃墟の中で遭遇する。
そんな不可思議な空間の中にエイリアンが佇む絵面は映画的に美しい。
これが酒場にエイリアンが突然やってきたら、ほんとにマヌケな絵面だ。
つまりこの映画では徹底的に不自然に映らないように計算されているのだ。
だから、観客もエイリアンの襲撃を作中の登場人物達と同じテンションで受け止めることができる。
シリアスになりすぎない娯楽映画の展開
西部開拓時代の白人をエイリアンに置き換えて皮肉交じりに描く、となればいくらでもシリアスな映画にすることができる。
だが、この映画はジャンル映画的な要素によってシリアスになりすぎない娯楽作品として仕上がっている。
ダニエル・クレイグ演じるジェイクは家族をエイリアンに殺されたならず者。
旅を進める内に軍人、子ども、牧師、エイリアン、アウトロー、インディアン、犬という濃いキャラクターが増える様は1976年のクリント・イーストウッド主演の『アウトロー』に近いものがあるし、戦いを通じながら最初馬の合わなかった男同士が互いを認め合う展開はアメリカアクション映画の王道の展開である。
もうだめかと思ったところに、味方の援軍が駆けつけ形勢逆転する展開もアクション映画としては外せない展開で、今作は騎馬隊ではなくインディアンである点がさらに評価できる。
物語のラスト、ジェイクが町の皆に認められながらも次なる自分の居場所を探して去っていくシーンは数々の西部劇やその他の映画で見られるラストシーンではないだろうか。
カウボーイ&エイリアンといういかにもなタイトルに騙され、「どうせしょーもないB級映画でしょ」とタカをくくってはいけない。
この映画はきちんと映画の王道と歴史の反省の上に成り立っている良作である。
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