ぽんぽんびより

本業は写真家なのに町づくりや震災支援の仕事に巻き込まれてます。

シリアル・イノベーターとスタンド・アローン・コンプレックス

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知人に頂いた書籍『シリアル・イノベーター 非シリコンバレーイノベーションの流儀』を読了した。

シリアル・イノベーター 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀

シリアル・イノベーター 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀

 

 イノベーションと聞くと私達はappleGooglefacebookなどシリコンバレー型のイノベーションを連想するが、日本にそのイノベーションの型をそのまま持ってきても成立しないという観点から書かれた本である。

 

書籍の中ではシリアル・イノベーターを以下のように定義している。

長い歴史を持った大企業でミドルという難しい立場にありながら「シリアル(Serial)」、つまり幾度となくイノベーションを起こす人のことだ。

また書籍中にはイノベーターの特性について以下のようにも書かれている。

特に自立心は、シリアル・イノベーターにとって欠かせない特性だ。

実はこの自立心こそがプロジェクトに対する自信と大きく関係している。ここでいう自信とは、自ら行動し、何を行うかを決め、時には他者が下した決定にさえも挑む自信である。

さらにシリアルイノベーターのリスクの選択についてはこう書かれている。

リスクが適度なものかどうかという判断は、自ら顧客や課題、自身が所属する組織について研究と理解を怠らないからこそ下せる。

一見するとシリアル・イノベーターは自己中、ワンマンなイメージにとられるかもしれないがそうではない。

書籍にはこうも書かれている。

シリアル・イノベーターはもし自分が間違った判断を下せば、誰かが指摘してくれると知っている。

 これらを簡潔にまとめると、シリアル・イノベーターは自ら顧客や組織、社会課題など全体を理解しているが故に自信を持って自らプロジェクトを実行することができるというわけである。

それらは自己中心的な行動ではない。シリアル・イノベーターは社会が求めている見えない課題に挑み、顧客が気づいていないニーズを発掘し、製品を開発してより善い社会を実現しようと行動をしている。

 

 

さて、これらシリアル・イノベーターの特性を見て私はある言葉を思い出した。

それは「スタンド・アローン・コンプレックス」である。

スタンド・アローン・コンプレックスとは攻殻機動隊 S.A.C シリーズに出てきた言葉である。

wikipediaに概要が書かれている。

作中における電脳技術という新たな情報ネットワークにより、独立した個人が、結果的に集団的総意に基づく行動を見せる社会現象を言う。孤立した個人(スタンドアローン)でありながらも全体として集団的な行動(コンプレックス)をとることからこう呼ばれる。

一見、個別で行動しているように見えるが、実はそれは集団の総意に基づく行動をとっているということである。

攻殻機動隊 S.A.C.では笑い男とクゼがスタンド・アローン・コンプレックスなキャラクターとして登場する。

笑い男はある企業を巡る陰謀の事実を知ってしまい誘拐事件とハッキング事件を起こす。

クゼは招慰難民の意思を汲み取り、難民のゴーストをネットに運び出し強制的な進化をしようと試みる。

両者は社会の中の小さな綻びに挑戦し、自らが実践できる範囲で行動を起こしている

その義侠心と有言実行の行動力に憧れた者は彼らを手助けする

一見両者は社会規範を逸脱した犯罪者のようだが、実は彼らを取り巻くコミュニティが望んだ行動をとっている。

だからこそ、草薙素子は彼らを心底憎むことはできない。

 

この、一見するとルールを無視した行動をとっているが、実は社会が求めた行動をとっている点はシリアル・イノベーターもスタンド・アローン・コンプレックスも非常によく似ていると思った。

しかし驚くべきは、攻殻機動隊 S.A.C.が2002年公開の作品だという事実である。

2002年といえばiPodが発売開始された翌年

そんな時代にシリアル・イノベーターを連想させるキャラクターを描けるとは、フィクションの世界はすごい。