【共謀罪】賛成か反対かよりも国民一人ひとりが賢くなって国家を監視できる社会にするということ
どうやら話題の共謀罪が成立してしまったようである。
共謀罪の危険性を訴えた記事が下記。
共謀罪を支持する人の大半が「国家の安全」とか「テロ対策」を掲げている。
中には「もっと早くに共謀罪があればオウム真理教による事件も防げたのではないか」という意見まである。
しかし本当に国のシステムが強固になれば国民の安全は守られるのだろうか。
私は日本でこれまで発生したテロ事件は国民が厳しい目を持っていなかったことが原因だと思っている。
今回の記事では、日本赤軍によるテロ事件、オウム真理教によるテロ事件、三億円事件を基に解説していく。
日本赤軍によるテロ事件
学生闘争に参加していた一部の学生が地下活動をするようになり、過激派集団になってよど号事件やあさま山荘事件を起こしたあれである。
彼らは銀行強盗や猟銃店を襲うことで活動資金をため、偽名を使って潜伏するアパートを借り、山の中で軍事演習をした。
ここだけピックアップすればあの時代に共謀罪があれば赤軍によるテロを防げたような気がする。
だが、私は彼らと彼らを取り巻く社会の温度差に注目したい。
学生闘争に参加していた彼らがどのように地下組織になっていったのかをよく描いているのは山本直樹による『レッド』だと思う。
レッドを読むと、1巻の冒頭からいきなり衝撃的なシーンが続く。
夏休みに入ったからという理由で闘争の会議の出席率が悪くなるというシーン。
扇子を持った(先生と思われる)大人が学生に「はやりのバリケード封鎖やらないの?」とのんきに話しかけるシーン。
闘う兵隊が少ないからと角材を薪に火を焚くシーン。
闘争心むき出しの人間とそれと対になるクールな人間。
そのクールさは冷静とも違う嘲笑する感じ。
「どうせ学生がやることでしょ」と下に見て、いざ彼らが事件を起こしてから「危険な学生だ!」と騒ぐ世論。
押井守の『人狼 JIN-ROH』とは違う空気感。
あの時闘争に参加していた学生を真剣に捉えていれば、もっと違う結果が待っていたかもしれない。
オウム真理教によるテロ事件
オウム真理教による事件は今更このブログで語るまでもないと思う。
事件を振り返りたい人はwikipediaにもまとめられているのでそちらを参照した方がいいだろう。
オウム真理教がどれだけ極悪だったのかを語る人は多くとも、オウム真理教がメディアに出ていたことは多くの人が忘れていると思う。
団体の代表である麻原彰晃はテレビに何度か出ているのである。
どのテレビ番組でも麻原彰晃を変わったタレント程度にしか扱っていない。
ここでも麻原彰晃と周りの人間の温度差を感じる。
オウム真理教の強行的な入信活動が指摘されていたにも関わらず、テレビを通じて世間の多くの人は麻原彰晃やオウム真理教をネタにしか思っていなかったのである。
明らかに怪しい組織であるオウム真理教を当時早い段階で捜査できなかったのは法律のせいなのだろうか?
共謀罪とオウム真理教の関係を基に書かれた記事はいくつかある。
私は社会の仕組み以前に、世間のオウム真理教に対する態度が問題だったと思う。
事件発覚後も「オウムの法則」と称してオウム関係者をテレビに出せば視聴率が取れる状態が続いたことが、当時の世論を象徴しているだろう。
結局お茶の間はワイドショーの中の出来事にしか捉えなかったのである。
同じく概要はwikipediaを見ていただければだいたいのことがわかると思う。
三億円事件は誰も傷つかず、見事にお金が盗まれたことで未だに話題に上る未解決事件である。
事件解決のために警察の一斉捜査が行われ、被疑者の数は十数万人に及んだが、真犯人は捕まっていない。
一方でマスコミの報道で疑いをかけられて自殺をした人がいる。
マスコミの報道、というより世間からあらぬ疑いをかけられた例は松本サリン事件の河野義行氏も記憶に新しいだろう。
また、出回っている情報を基に冤罪(と思われる状態)に持ち込まれた例は他にもある。
結局私がなにが言いたいのかと言うと、まだ起きていない事件に対して情報だけで「悪」と決めつけ、司法の場に引きずり出すことは難しいということが言いたいのである。
たしかに共謀罪なりテロ等準備罪なり呼び名はなんでもいいが、これから起こるかもしれない事件を事前に防止できればそれは治安維持が完成された理想的な社会だ。
だが、『マイノリティー・リポート』や『エネミー・オブ・アメリカ』、『陰謀のセオリー』など数々の映画で国家が定めたシステムは完璧でないことが明示されている。
どんなに女性を守りましょうと謳った所で、結局一般の人には見えない捜査の中で傷ついている人だっている。
大義名分を掲げてシステムを構築しようともそれを使ったり、信じたりするのは人間なのである。
そして、私達は防潮堤を波が越えてくる映像や安全だと言われた原発が壊れた映像や広範囲に町を封鎖しないといけない事態を目にした東日本大震災の時に、国家は国民一人ひとりの命を守れないことを知った。
共謀罪による権力の乱用やヒューマンエラーが決してないとは言いきれない。
こちらの記事で「国民による社会の監視の目がしっかりしていれば乱用の恐れはなくなる」と書かれている。
国家がきちんと機能しているのかを国民一人一人が賢くなり、監視するのはイタリアでは当たり前である。
世の中の常識に対して「なぜそれが常識なのか?」「ほんとうにそれは正しいのか?」を常に問う姿勢、それが真の民主主義なのだ。
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